現在米州開発銀行(IDB)グループで働く日本人スタッフの数は19人(2024年12月現在)です。米国ワシントンDCをはじめ、中南米・カリブ諸国(LAC)の現地事務所で働いています。そんな日本人スタッフの職種、業務内容、経歴はそれぞれ異なりますが、皆に共通するものは開発という仕事への情熱と結果へのこだわりです。「日本人スタッフの横顔」では、ワシントンDCやLACで活躍するIDBスタッフの仕事、IDBという国際機関で働くことの楽しさ等について、スタッフの生の声をレポートします。

部署名:IDB インベスト、商品運営開発チーム
私は日本のメガバンクで10年以上、日本、コロンビア、米国で勤務しましたが、コロンビアの地場銀行への出向を通じて地域金融に携わる機会を得たことや、邦銀の中南米事業のビジネスプラン策定に関わった経験から、「開発」と「ビジネス」をどのように結びつけてるかに強い関心を抱くようになり、これが民間投資を介した開発金融を志すきっかけとなりました。邦銀でのジョブローテーションで日本への帰任が決まりつつあったタイミングで、中南米・カリブに対する開発金融に引き続き携わりたいという思いから転職を決意し、2023年に商品運営開発チームのリーダーとしてIDBインベストに入行しました。
IDBインベストは、1986年に民間投資の促進を目的として設立されましたが、2016年にIDBの民間投資部門との合併を通じて、事業の規模と効率性を大幅に拡大した経緯があります。この合併によりIDBインベストのビジネス環境は大きく変化し、事業拡大が続く中、2024年3月には35億ドルの増資が決定され、地域内のより多くの人々に多様な金融支援と多角的な開発効果を提供するという強いビジョンを日々感じています。
一方で、急速な事業拡大に伴い、内部管理や業務プロセスの整備が追いついていない部分もあり、私のチームはこうした課題に対応するために新設されました。私の主な役割は、内部管理の高度化と業務プロセスの効率化であり、組織横断的なプロジェクトを多くの専門家と連携しながら推進しています。例えば、IDBインベストが提供する金融商品の詳細が内部で明確に定義されていなかったり、承認プロセスが確立されていなかったりと、商業銀行出身者としては驚くこともあります。しかし、これを柔軟性という強みと捉え、クライアントのニーズにできる限り応えるという機運がIDBインベストにはあります。この柔軟なアプローチにより他のMDBでは見られない革新的な取り組みを行うこともあり、それゆえの挑戦も多いですがそんな中で得られるやりがいも大きいです。
「開発金融」と聞くと新規投資案件の推進が主に見えるかもしれませんが、それを支えるビジネス基盤の整備も同様に重要であり、幅広い専門知識が求められます。この分野では日本企業で培ったジェネラリストとしての経験が大いに活かされると同時に、日本人としての強みを発揮できる機会が多くあると感じています。
現在、スペイン語話者が多数を占める一方で、公式言語は英語であることが明確化されており、増資に伴う職員の拡充も相まって、今後はさらに組織の多様性が広がることが期待されています。IDBグループで働く日本人はまだ少数ですが、より多くの日本人の方々に興味を持っていただき、同じ志のもとで共に働ける日が来ることを心より願っています。

部署名:社会セクター(SC/SCL)
私は2011年終わりに米州開発銀行(IDB)に入行し、以来社会開発分野のプロジェクトに従事しています。IDBの社会開発局が取り組むテーマは、教育、保健、社会保障、雇用、ジェンダー・ダイバーシティなど多岐にわたります。入行してから3年間は南米パラグアイのカントリーオフィスで、主に保健、ジェンダー分野のプロジェクトに携りました。その後ワシントン本部に移り、現在はラテンアメリカ・カリブ海諸国で実施されているプロジェクトのモニタリング、新規プロジェクトの計画立案等に関わっています。
開発に興味を持った最初のきっかけは、中学時代に世界の貧困問題や社会経済格差を取り上げる授業を受けたことでした。その後大学院在学中にIDBでインターンを経験したこともあり、開発分野の仕事に就きたいと思うようになりました。卒業後は日本の開発コンサルタント会社に就職し、IDBに入行するまで、主にラテンアメリカ諸国で政府開発援助プロジェクトの計画立案、実施、評価に関わりました。
IDBで仕事をする魅力としては、地域密着型の国際機関であること、チームワークの強さ、仕事のダイナミックさ、オープンな文化が挙げられます。カントリーオフィスでは特に、相手国との間に築かれた信頼関係や、その国に対する理解や情熱があるからこその対話や協議が行われていることを強く感じます。またプロジェクトの立ち上げと実施には、例えば保健プロジェクトであれば保健の専門家はもちろん、その他に環境、ジェンダー、モニタリング・評価、ファイナンス、調達、法律など、様々な分野の専門家が一丸となって仕事をします。多種多様な経歴や専門性を持った人達とチームを組み、カウンターパートと共にプロジェクトを進めていく過程は、地道ながらダイナミックで、学びや刺激に富んだものです。さらに、「ラテン文化」と聞いて想像するような気さくでオープンな雰囲気、濃い人間関係もIDBならではの良いところだと感じています。
ひとくくりに中南米・カリブ海諸国と言っても国によって経済、社会、文化はさまざま、開発援助のニーズも多様でかつ徐々に変化しています。最近は私が所属する部署でも、高齢化対策、障害者支援、AI、デジタルトランスフォーメーション、リスキリングなど、日本でも課題となっているテーマを扱うことも増え、様々な専門性や経験を活かすチャンスが広がっています。ぜひより多くの方にIDBに興味を持って頂けたら嬉しいです。