米州投資公社(通称IDBインベスト) は、1986年に民間投資の促進を目的として設立され、IDBグループにおいて民間向け投融資を専門とする機関です。2016年にIDBの民間投資部門との合併を通じて、事業の規模と効率性を大幅に拡大しました。
近年、中南米・カリブ海諸国(LAC)は、多くの国においてマクロ経済の安定と経済のグローバル化の恩恵を受けて着実な成長を続けています。そのなかで、エネルギーやインフラ整備、企業の生産性向上にむけた投資等に関し、IDBインベスト が果たし得る役割の重要性は今後、益々高まっていくことが期待されます。

こうした背景を踏まえ、2024年3月に開催されたIDBグループ年次総会にて、IDBインベストの35億ドルの増資が加盟国(計48か国)間で合意されました。これは資本全体を約43パーセント増やすものであり、IDBインベストの資本は過去25年間で最大の規模に拡大することになります。なお、今般、日本は現行シェア(3.67%)に沿って、IDBインベストに対し193億円の支援を行う予定です。

今回の増資に併せて、IDBグループ年次総会では、IDBインベストの新ビジネスモデル「Invest 2.0」が採択されました。IDBインベストは、同ビジネスモデルの下、LACの膨大な開発ニーズに対応するため、従来の協調融資(Co-Finance)型の支援から、より一層のリスクを 引き受けることを可能とする Originate to share 型の支援に転換することで、LAC への民間資金の更なる呼び込みを目指すとしています。これらの新しいビジネスモデルと追加資本の組み合わせにより、今後10年間で1,020億米ドルの長期融資を地域にもたらすと予想されます。これは現在のビジネスモデルで可能な融資額の2倍以上になります。このうち590億米ドル(58%)は、IDBインベストの触媒効果を発揮した結果もたらされる民間資金動員によって達成されるものです。このような規模の民間資金の動員により、資本の放出と再配分の好循環を生み出し、個人投資家の参加をさらに増やし、資本効率を大幅に改善されます。また、IDBインベストはエクイティ投資やよりリスクの高い融資業務に取り組む能力を大幅に向上させるとしており、日本企業や金融機関との連携のケースが増えていくことが期待されます。
IDB インベストと我が国の民間企業等の連携例
(2022年12月)
IDB及び国際協力銀行(JBIC)(2017年12月)

その他、IDBインベストの事業により、250万の中小零細企業(MSME)が支援を受け、新たに950万人の雇用が創出されると予測されています。また、160万人の貧困層や社会的弱者も直接支援されます。さらに、390万トンのCO2排出削減と再生可能エネルギーによる140万kW相当の発電設備の建設が予定されています。

BID for the Americasは、中南米・カリブ海諸国の26カ国とヨーロッパ、北米、アジアの主要パートナーとの間のビジネスチャンスを促進し、経済関係を強化することを目的としたIDBのプログラムです。
BID for the Americasは、中南米・カリブ海諸国でのビジネス拡大を目指す日本企業に機会を提供します。
本プログラムは3つの戦略的分野に焦点を当てています:
- 調達(プロキュアメント)
透明性を促進し、調達の機会を共有するため、日本で調達ロードショーを開催します。さらに、モバイルアプリを導入し、建設、IT、コンサルティングなどの分野における調達データにリアルタイムでアクセスできるようにする。 - 貿易・投資
IDBの広範なネットワークと専門知識を活用し、日本企業とのビジネス・パートナーシップを強化し、新たな貿易・投資の機会を創出することを目指します。IDBアジア事務所は、こうしたつながりを促進する上で重要な役割を果たします。 - 協調融資(コ・ファイナンシング)
IDBは、日本企業が関与する共同プロジェクトを支援するために資金を動員し、地域全体で協力関係を拡大することにコミットしています。
2024年1月には、IDBは日本貿易振興機構(JETRO)、海外投融資情報財団(JOI)、と連携し、BID for the Americasプログラムを日本企業や民間企業の代表者に紹介するセミナーを開催しました。IDBのゴールドファイン総裁も出席し、企業関係者から同プログラムに対し、高い関心が示されました。
(2025年02月18日)
(2024年10月30日)