イグレシアス前IDB総裁の講演会開催
駐日事務所は3月5日、国際協力銀行(JBIC)の講堂にて、エンリケ・V・イグレシアス前IDB総裁の講演会を開催いたしました。同氏は、IDB総裁として17年間以上、ラ米諸国の社会・経済発展の推進等に尽力してこられ、現在はイベロアメリカ事務局長、(Secretaría General Iberoamericana(SEGIB))の要職にあります。今回の訪日は、日本とラ米諸国との関係強化への多大なる貢献に対して、日本政府から授与された旭日大綬賞に出席するためでした。

イグレシアス前総裁は「ラ米およびアジアの経済発展とその課題」というテーマで「アジアとラ米諸国の経済、社会、体制、技術開発」などの観点から両地域の違いについて、また現職であるイベロアメリカ事務総長として現在の活動内容について講演されました。

講演会ではJBICの篠沢総裁より、イグレシアス前総裁のこれまでのラ米諸国と日本との関係発展、そしてJBICのラ米地域での活動に対する協力や案件実施への貢献に対して深い感謝の言葉が述べられました。

また、イグレシアス前総裁の長年の友人でもある日本格付研究所の内海社長は、同氏の日本に対する深い愛情と友情に触れると共に、イベロアメリカ事務局長として、ラ米およびスペイン・ポルトガルの交流強化のための活躍ぶりについて紹介されました。

イグレシアス前総裁からも、内海社長がラ米にとって真の友人であること、そしてラ米が一番苦しい時期に様々な指導や多大な支援を受けたことに対して内海社長へ感謝の意が示されました。

基調講演でイグレシアス前総裁は、1950年代、ラ米諸国の一人当たりの所得は韓国を約50%上回っていたが、現在は状況が変わったこと、そしてその変化の要因を例に、ラ米諸国はアジアの経験から多くの教訓を学べるのではないかと述べました。

質疑応答の要点は以下の通り:(1)中南米諸国の天然資源国有化問題に対しては、ボリビアの例のように、ガスパイプラインは国有化されているが、投資会社との間で22本の契約が結ばれ、投資が継続されていること、(2)中国の台頭などにより、世界的に一次産品の需要と価格が上昇しているが、潤沢な資源や資源価格上昇にのみ頼るのではなく、天然資源から得られる収入をうまく活用し、社会連帯感を高めていくことが重要なこと。(3)チリが資源価格の上昇による追加的な収入を基金・準備金として貯蓄し、メキシコも同様に対外債務の管理を強化するなど、ラ米において潤沢な資源に甘んじることなく、それをきっかけに新たなパラダイムを目指して行くべきであること。(4)最近の移民政策と移民者数の増加により、22カ国あるイベロアメリカ諸国からの移民が、スペインやポルトガルにおいて大きな戦力になっていること(実際、スペインは70万人もの移民を受け入れ、過去5年間の同国のダイナミックな成長の三分の一は、この移民の貢献によること)。(5)移民に関する問題は、人権問題が関連していることが多く、人権問題を基本に考え、移民が現地社会に溶け込み、そして大きな貢献を果たすようになってきていることも世論に訴えかけていくことが必要である。
前IDB総裁エンリケ・イグレシアス氏
イグレシアス前IDB総裁とIDBのOBおよび関係者
前IDB総裁エンリケ・イグレシアス氏 イグレシアス前IDB総裁とIDBのOBおよび関係者
ボリビア共和国エボ・モラレス大統領のセミナー開催
駐日事務所は、3月6日に日本貿易振興 機構(JETRO)と共同で、ボリビア共和国のエボ・モラレス大統領による「ボリビア政治-経済の最新動向」に関するセミナーを開催いたしました。

モラレス大統領は、2006年1月、同国初の先住民族出身者として大統領に就任し、天然ガスや石油資源の国有化に踏み切るなど、天然資源分野を中心に急進的な政策を実施したことで注目を集めており、それまでの米国重視から一転してベネズエラなどとの親交を深めるなど、従来と異なる外交政策を展開しています。

モラレス大統領は講演の中で、1970年以来初の財政黒字達成、憲法改制による戦争放棄の明記、天然資源の国有化を掲げて、就任以来の政策に対する自信と改革の成果を強調しました。

特に、注目を集めている天然資源の国有化については、これまでの天然ガス収益のうち、外国企業に搾取されていた部分が、今回の国有化により大きく増加するなどの成果があったことを強調しました。今後も、外資企業の利潤を保証しつつも、銅や鉄などの輸出にかける関税を25%引き上げる法案を近く議会に提出し、同国の財産権を確保していく考えを明らかにしました。

質疑応答を通じて、天然資源開発の主導権が企業から政府に移ったこと、国民には「天然資源は国家のものである」という意識を定着させ、外国投資家との対話と資源保護を強調しながら、天然資源の国家管理強化を推進していくと述べました。

<ボリビア共和国>南米中央部に位置し、日本の約3倍の面積をもつ内陸国。 人口約920万人。8割以上を先住民(混血を含む)が占める。鉱業(亜鉛、錫、金)や天然ガスなどの天然資源や大豆、木材、砂糖などが総輸出の8割を占める。 1人あたりの国民所得は1,010米ドル(2005年世銀)で南米の最貧国の一つ。

<エボ・モラレス大統領>1959年生、青年時代には農業組合、労働組合、コカ生産者6連合で活躍。1997年に下院議員初当選。2002年1月には除名されるが、2002年8月に再選される。2005年12月に大統領に立候補し、第1回投票で53.7%を獲得して任期5年の大統領に就任。2003年3月には第3回水フォーラム出席のため来日。
エボ・モラレスボリビア大統領
エボ・モラレスボリビア大統領
ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)事務局長によるセミナー開催
3月14日、駐日事務所は国連大学(UNU)と共同で、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)のホセ・ルイス・マチネア事務局長を招いてセミナーを開催しました。このセミナーは、「ラテンアメリカ・カリブ海諸国の社会経済の挑戦:開発課題の定義」のテーマで行われました。

マチネア事務局長は、ラテンアメリカ・カリブ海諸国(LAC)がこの4年間で成し遂げた著しい経済発展について、これら が世界経済の成長に伴う外的要因と時間的整合性の取れた国内政策が結びついた結果によるものだと述べました。しかしながら、持続的で公平な社会を実現するには、LAC各国の政策立案者が社会課題の解決に更に挑戦していくべきであると強調しました。また、LAC諸国の大半の国々が貧困撲滅や格差対策、社会的連帯等などの緊急課題に今後も注視していく必要があると明言しました。

LAC諸国が直面する社会的・経済的課題の解決に対するマチネア事務局長の見解に基づき、パネルディスカッションでは駐日メキシコ合衆国ミゲル・ルイス・カバーニャス大使、日本貿易振機構星野妙子氏、上智大学イベロアメリカ研究所堀坂浩太郎所長、および筑波大学APC研究所ネアントロ・サーベドラ・リヴァノ所長とともに活発な議論が行われました。

セミナーには、マチネア事務局長の功績と今回のテーマに関心のある出席者が多数参加し、その後のオープンディスカッションでは積極的な議論が交わされました。
ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)ホセ・ルイス・マチネア事務局長
ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)ホセ・ルイス・マチネア事務局長
第48回IDB年次総会および第22回IIC年次総会開催
第48回IDB年次総会等が3月16日から20日にグアテマラ市にて開催され、当事務所から鹿戸所長が総会および一連の会合に出席しました。今回の総会には、主催国グアテマラのほか、チリ、エルサルバドル、ホンジュラスの各大統領、ベリーズの首相等が来賓として出席されました。日本からは、田中財務副大臣が出席され、総務演説を行ったほか、モレノ総裁との会談の際に、防災基金への日本の拠出に関する署名を行いました。また、韓国もこの基金へ拠出しており、財政経済部の陳棟洙(チン・ドンス)第2次官が署名を行いました。

今回の総会および特別総務会など一連の会合においては、(1)ラテンアメリカ・カリブ海地域の貧困削減、格差是正などを目的とした人口多数派へのアプローチ、(2)エタノールなど再生可能エネルギーの開発を含む環境問題、(3)水資源の保護や有効活用など、について活発に議論されたほか、ボリビア、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ニカラグアの5カ国に対する総額44億ドルの債務救済について発表が行われました。

また、この機会に、日本-IDB奨学金プログラムでIDB加盟各国の大学院等に留学したグアテマラ、エルサルバドルの元留学生が集まり、IDBのレイ・デ・マルランダ社会開発研究所長、高橋理事、財務省木村開発機関課長らと懇談しました。また、グアテマラ駐在の四之宮大使およびエルサルバドル駐在の細野大使も出席して懇談に参加されました。

次回IDB年次総会は、明年米国で開催することが承認され、具体的な開催都市は今後明らかにされる予定。第48回IDB年次総会および第22回IIC年次総会の詳細はこちらからご覧になれます。
http://www.iadb.org/am/2007/index.cfm?language=en
田中財務副大臣と米州開発銀行モレノ総裁 Photo by Willie Heinz. c Inter-American Development Bank
田中財務副大臣と米州開発銀行モレノ総裁
Photo by Willie Heinz. © Inter-American Development Bank
韓国財政経済部の陳棟洙第2次官と米州開発銀行モレノ総裁 Photo by Willie Heinz. c Inter-American Development Bank
韓国財政経済部の陳棟洙第2次官と米州開発銀行モレノ総裁
Photo by Willie Heinz. © Inter-American Development Bank
筑波大学と共同でワークショップ開催
3月26日、駐日事務所は、筑波大学の APEC研究センターと共同で、「ラテンアメリカとアジア・太平洋地域における経済およびビジネス強化:FTAとAPEC等の役 割」についてラウンドテーブルを開催しました。メインスピーカーはIDB地域統合計画局のプリンシプル・アドバイザーであるアントニ・エステバデオルダル氏が務めました。

筑波大学構内の会議室で開催されたラウンドテーブルには、ラテンアメリカ・カリブ海諸国(LAC)およびアジア・太平洋 (AP)地域からの地域統合関係、貿易専門家、各国駐日大使、大使官関係者などが集まり、今後の両地域の経済発展、経 済協力や貿易投資を促進するための経済とビジネスの展望について協議しました。

また、ワークショップでは、2007年9月 初旬にオーストラリアで開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)会議で取り上げられる議題に関心が集まりました。
メインスピーカーを務めるアントニ・エステバデオルダル氏(筑波大学でのワークショップ)
メインスピーカーを務めるアントニ・エステバデオルダル氏(筑波大学でのワークショップ)
米州投資公社(IIC)ロゴジンスキー社長一行の来日
4月9日から4月12日の日程で、IDBグループの米州投資公社( I I C )(www.iic.int)のジャック・ロゴジンスキー社長が2年ぶりに来日し、同行したIIC金融・危機管理部のホルへ・ロルダン部長と共に、財務省、国際協力銀行、日本貿易振興機構などの政府および関係機関、そして中小企業金融に特化している中小企業金融公庫や商工組合中央金庫などの金融機関を訪問し、各機関とIICとの今後の業務協力等について精 力的に議論が行われました。

日本貿易振興機構などの政府および関係機関、そして中小企業金融に特化している中小企業金融公庫や商工組合中央金庫などの金融機関を訪問し、各機関とIICとの今後の業務協力等について精力的に議論が行われました。

4月10日には、駐日事務所において、「米州投資公社(IIC):ラ米における中小企業融資への革新的なアプローチ」をテーマに会合が開催されました。

高橋IDB理事の開催挨拶に続いて、「ラ米のビジネス環境とIICの役割」についてIICのロゴジンスキー社長が講演し、さらに「ラ米における中小企業融資への革新的なアプローチ」について、ロルダン部長より詳しく説明がありました。

また、IICの中南米11カ国への実際の融資活動を紹介するIIC2006年版DVDが上映され、参加者からも好評でした。2005年の第46回IDB沖縄年次総会でI I Cと協力取極( M O U )を締結したWorldwide Uchinanchu Business Association(WUB)の関係者も参加し、活発な意見交換が行われました。

今回のロゴジンスキー社長およびロルダン部長の訪日を通して、日本の中小企業の中南米への進出戦略、金融支援の現状、およびその問題点などが議論されました。また、現地でのIICと日本の金融機関および進出企業、更には現地金融機関との実務的な協力関係を強化することの必要性が再認識されました。
米州投資公社ジャック・ロゴジンスキー社長(右)とホルヘ・ロルダン部長(左)
米州投資公社ジャック・ロゴジンスキー社長(右)とホルヘ・ロルダン部長(左)