| |
|
IDBダイアローグ 「環境と開発:進化するIDBの取り組み」開催
|
2003年3月20日、当事務所は米州開発銀行ワシントン本部持続開発局環境部課長のジェニン・フェレッティ氏を招き「環境と開発:進化するIDBの取り組み」と題したセミナーを開催した。席上、フェレッティ氏による講演の後、国際協力銀行(JBIC)環境審査室 畑中邦夫室長による「経済発展と環境保護のバランス」と題した論評があった。参加者は約60名。(協力:(財)海外投融資情報財団、(財)国際金融情報センター、(社)海外コンサルティング企業協会、(社)ラテン・アメリカ協会)
講演概略は次の通り。
環境と開発:進化するIDBの取り組み (フェレッティ氏)
IDBは環境に関して
・IDBの融資プロジェクトにおける環境保護基準の充足
・加盟国政府及び民間部門に対し環境保護を主導すべく融資・非融資活動を通しての支援に焦点を当てて活動してきた。この間、加盟各国とともに様々な努力をしてきた結果、環境メカニズムの整備・保護を行うことができた。今後も様々な課題にチャレンジしてゆきたい。
ラ米・カリブ諸国では環境は天然資源であり、経済発展には欠くことができない要素であることから、環境を司る省庁や関連省庁内に環境保護を担当する部署が設置され、また関連法規の整備や保護地域の設定も進み、都心部での環境問題、大気汚染、衛生や下水処理に焦点が当てられ整備されてきた。しかし、各国独自あるいは多国間や二国間援助によって様々な形で投資が行われてきたにもかかわらず、自然破壊への対応の遅れ、天然資源の枯渇、土地の侵食、住環境の悪化といった側面も見られる。
開発における環境に関わる具体的な問題点は以下の通り。
@ 不十分な水資源、清潔な飲料水へのアクセス不足
A 森林伐採による土壌の侵食、洪水多発、生物的多様性の破壊
B 海洋・沿岸資源の枯渇
C エネルギー
D 都市部での環境汚染
E 自然災害への脆弱性
F 気候変動による環境への影響
環境劣化により経済発展が進まない明確な事例としてはハイチのケースをあげることができる。ではなぜ環境保護に対し投資をしてきたにもかかわらず、環境劣化が起きてしまうのか。人間の行動は様々な誘因によってなされるが、その結果として目先の利益を追求するがために意図的ではないけれども環境劣化を引き起こしてしまうケースが見受けられる。このプロセスに歯止めをかけるには政策ツールのほか、公的機関による介入も必要となる。ラ米・カリブ諸国はこのような環境に対する強い制度を持っていないし、環境省庁の予算が少なく活動も限られている。また、環境保護のための建設的な市民社会との枠組みもできておらず、国民が環境保護に加わるという体制になっていない。
今後は環境保護に対し一貫性のとれた政策が必要となる。環境は医療、健康、農業、エネルギー、運輸、貿易等多分野にわたる問題であるが、共通の問題として捉え、それぞれの分野の関連部署が横断的に環境に対する責任を共有し合う体制作りが重要となる。
こういった体制作りを支援するためにIDBでは下記2点に注力している。
・ 環境統治能力を強化する。
これには市民社会を巻き込んで技術的、財政的に制度、基盤を強化し、監視機能も持った規制体系を作り上げる。
・ 主流となっている環境問題を社会・経済政策に盛り込み具体化させる。
環境破壊は経済発展を阻害するので環境問題を政策とリンクさせる。そのためには個人、組織の能力向上が必要であり、また政策において環境上のプラスとマイナスを定量化するツールの開発が必要となる。
IDBはその優先分野としてラ米・カリブ諸国に対する国家の近代化、競争力強化、社会開発、地域経済統合の支援を掲げているが、これらと同じ様に環境問題にも取組んでいかなければならない。
IDBは、その活動を通じよりよい環境プロジェクトやイニシアティブを模索することにとどまらず、今後はIDBの支援が優先分野に対してどのようにリンクし、どのような効果があったか評価していきたい。
それぞれの優先分野における環境とのつながりは以下の通り。
@ 国家の近代化と環境
・ 環境統治の強化
・ 財務の持続性改善
・ 地方分権化
・ 広範囲の管理手法の導入
A 競争力強化と環境
・ 天然資源とエコシステムの生産価値の保護
・ 公共、民間投資の促進
・ 自然にやさしい生産構造の促進
・ 許認可、承認システムの確立
・ グリーン製品、サービスの促進
B 社会開発と環境
・ 健康と環境の関係強調
・ 遠隔地の住民や少数民族の支援
・ 有害物質等、環境における危険性の減少
C 地域統合と環境
・ 環境に関する機関、政策、制度の強化
・ 地域統合による環境への影響の確認
・ 効果的な公共財(分水嶺等)の地域共有、管理体制の促進
・ インフラ分野(道路、通信網等)の共有による効果的な環境分析と監視
今後の環境におけるIDBの重点方針は以下2点。
@ 環境に関する考察を国ごとに政策の初期段階から行うことの支援
・ 環境や社会セクターに対し国ごとに環境に対する戦略の再検討と重点分野の設定を促す。
・ 政府と市民社会の協調を促す。
・ IDBのセクターごとの戦略と調整を図る。
A 進展を定量化することができる能力開発の支援
・ 環境統治と環境政策開発の現状を定量分析し、変化と進展を評価する能力の開発支援。
環境対策の効果を評価するにあたっての一般的なツールはまだ確立されていないが、評価能力を開発することは加盟国側のみならずIDB内部でも必要で、そのためには下記が重要となる。
・ 基礎となるデータや指標を作成する共通の方法の開発
・ 結果、成果、インパクトを表す一貫した指標の開発
・ 環境変化をモニターする情報システムの開発と管理
・ 地域社会と市民社会を参加させる仕組みの構築
経済発展と環境保護のバランス (畑中氏)
JBICは開発援助を目的のひとつとしており、IDBと問題意識の多くを共有している。本年2月にIDBはメキシコ政府と共催で環境と開発をテーマにしたセミナーを開いたが、その際日本より橋本元首相が参加、日本の公害経験という題で講演を行ったが、その中で日本は経済成長を急ぐあまり環境には配慮せず、結果として多くの公害病を引き起こし、多くの人の命と生活を犠牲にしてしまった。これらの賠償に使われた補償金は環境への配慮を行うに必要なコストよりも極めて大きかったと述べ、この教訓より経済発展と環境への配慮は両立するものであると結んでいる。
日本の公害対策での大きな変革はもちろん地域住民による訴訟が大きな要因であったが、これに対し地方自治体が国に先立って対応し、国よりも厳しい基準を設け、また企業とも公害防止協定を結んだという努力も大きく貢献した。
貧困撲滅と経済発展および環境保護は不可分の関係にあると考える。すなわち、経済発展なしには貧困撲滅はできないし、環境を保全、改善する投資もできない。また環境破壊を伴う経済発展は持続しない。例えば、農村部での計画性のない森林の伐採は土壌の劣化、砂漠化をもたらし住民の生活を脅かすものとなる。よってこの3つの要素は同時に考慮されるべき問題であるが、実際には環境コストを誰が負担するかなど難しい点が多い。
更に開発援助機関の資源、資金量にも限りがあり、すべてのことができるわけではなく、途上国自身が自ら環境保護・改善を管理できる能力を開発することが必要である。そのためにJBICでは、プロジェクトを検討する際に常に将来のモデルになるようなものに資源を投入し、事後は途上国自身が環境保護・保全を行うことができるように計画している。これにより、一件のプロジェクトが全国に広がっていくような仕組みの構築を目指している。地方自治体が貧困撲滅、環境保護に重要な役割を担うことになり、その能力向上は大きな課題となる。
JBICでは02年4月に新たに環境社会配慮ガイドラインを策定し、環境のみならずプロジェクトにおける社会への配慮も意識しているが、このような点は時代とともに変化していくものであり、JBICのプロジェクト審査においても柔軟に対応していかなければならない。
今までJBICはIDBと中南米でいくつかの協調融資案件の実績があるが、今後とも環境における概念、戦略においても意見交換をしながら協力関係を強化していきたい。
|