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生産性マラソン
政府は競争力のある個別産業に奉仕する民間企業「クラスター」の成長を促すべきと専門家が指摘 |
チャロ・ケサダ
イタリアの靴、カリフォルニアのワイン、コスタリカのソフトウェアは一夜にして現われたものではなく、当然のことながら、わずかな妙案とか、一回の経済的な幸運によって競争力ある地域産業の象徴になったわけではない。ハーバード大学戦略・競争力研究所のマイケル・ポーター所長によれば、これらのよく知られたサクセスストーリーは、長年のマクロ経済レベルにおける競争力向上の努力が結実したものである。
ワシントンDCのIDB本部において、「ラ米における競争力とコンセンサスの形成」と題する最近開催されたセミナーで講演を行ったポーター所長は、カリフォルニアのワイン産業の成功はワインの製造に適した気候や良質な土壌によるものではないと説明した。カリフォルニアのワイナリーが成功したのは、ボトルやラベル貼りの装置から殺虫剤、宣伝キャンペーンに至るまであらゆる物を生産することでワインの栽培、生産、マーケティングを支える何千という専門会社に囲まれているからである。このようなサプライヤーのネットワークがあればこそ、生産者は品質と成長に専念できる。「新しいワインを販売したい。」「マーケティング専門会社が喜んで手伝いましょう。」「品種改良が必要。」 「適切な研究所が近くにあります。」「物流が心配。」 「高度に統合された道路、鉄道、港湾、空港のネットワークがすぐ近くにあります。」という具合である。
マクロとミクロ
ポーターは、このような特定の製品を取り巻く産業・サービス群を「クラスター」と呼んでいる。IDBでの講演で、ポーターは、これらのクラスターが地元の強力なミクロ経済の基盤を形成しており、それらが適切に機能できるかどうかは、地域や国がその人材、財源および天然資源をどの程度活用できるかにかかっていると説明した。
「この10年の大きな悲劇は」と、彼はラ米について次のように述べた。「マクロの見通しを全面的に重視したことである。競争力とは、貿易部門が単に輸出しているということだけではない。地場産業に目を向けることが必要だ。地場産業が非生産的な場合は、輸出産業をもだめにする。」
「国の貿易の開放性、教育予算、あるいは投資水準を見て、国民1人当たりのGDPは説明できない。」とポーターは言う。「しかし、ミクロ経済政策をみれば説明できる。」ポーターは、戦略・競争力研究所が刊行した『2002年国際競争力報告』で発表された調査結果について紹介した。報告書は、世界各国において1人当たりGDPとミクロ・レベルにおける生産性の決定要因との間に強い相関関係があることを明らかにしている。
ポーターによれば、適切なミクロ経済政策は、4つの分野を重視することで地元レベルでの生産性を上げることができる。その4分野とは、インプット(労働やインフラなど)の質の向上、投資環境と地元競争の支援、品質の高い製品やサービスを求める消費者の権利の保護(たとえば消費者保護法などを通じて)、および産業クラスターの育成である。
ポーターは、コスタリカの情報技術セクターの成功は、こうしたミクロ経済政策がいかに成果を上げられるかを物語る好例であると説明した。コスタリカ政府は、このセクターが内外の障害なく成長できるように計画した。政府は企業や事業団体と協力し、同セクターに有利な法規制上の環境を整え、地元の大学にインセンティブを与え、外資を誘致するインフラ政策(たとえば航空輸送に対するオープンスカイ協定や税率の低い工業団地など)を推進した。20年間にわたって、こうした組織的取り組みは、製造、組立およびソフトウェア開発企業のクラスターの育成を助け、その結果、何千もの雇用を創出し、最終的にインテルやモトローラなどの企業による大規模な外国資本を誘致した。
適切な役割
ポーターは、しかし政府だけではそのようなクラスターを生み出すことは決してできないと忠告した。彼はラ米の一部諸国に「政府がやるべきだ」と考える傾向があることを警告し、そうしたやり方には少なくとも2つのリスクがあると述べた。「ひとつは、政府がやってもうまくいかないことであり、もうひとつは、新政権が前政権の取り組みを放り出すことが多く、従って継続性がないことである。」
開発のプロセスを推進する代わりに、政府は、民間セクターと協力する「まとめ役」になるべきだ、とポーターは言う。ただし、「これはラ米では容易なことではない。というのは、政府と実業界の間でこれまで余り協力が行われていないからである。」と彼は指摘する。政府はまた、安定した予測可能なマクロ経済環境、法的環境、政治環境を整え、社会状況を改善することによって、生産性と競争力を助長することができる。
一旦有利な環境が整えば、商業会議所、組合、協同組合などの産業組合や団体は、政策立案者と民間企業との橋渡し役になることができる。しかし、ポーターは、これらの団体も競争力の育成に全力で取り組まなければならないと警告する。「あまりに多くのラ米諸国で、商業会議所の機能は社交クラブの域を出ず、企業や製品のプロモーションにほとんど役に立っていない。」と彼は指摘する。
ポーターによると、域内の大学も、実業界との接触がなく、これが、国の革新性や応用研究を育成する能力を限定している。産学協同の成果の一例として、ポーターは、マサチューセッツ州を挙げた。同州では、毎年特許取得数が最も多い25団体に7大学が入っている。
ポーターは、ラ米の民間セクターに競争力の強化により重要な役割を果すよう要求した。「彼らは競争力[強化の任務]を現在政府に任せているが、政府は、個々のクラスターが[成長するため]どのようなスキルや情報が必要なのか分からないので、政府だけではできない。」と彼は指摘する。ポーターは、企業が地元のインフラ改善に積極的な役割を果たし、教育・研究機関と緊密に協力してカリキュラムをクラスターのニーズに合うようにし、政府に規制問題や制約に関する情報や意見を提供し、事業団体を活用して影響力を増大し、規模の経済を達成すべきであると主張している。
ポーターは、各国政府に特定のクラスターを重視しないよう警告し、その代わり伝統的および非伝統的産業のすべてのクラスターを開発プロセスに参加させるよう促した。加えて、国の競争力強化は、一代の政権では達成できない長期的プロセスだと注意を促した。「競争力は長距離走であって、短距離走ではない。」とポーターは主張する。
(原文をご覧になりたい方はhttp://www.iadb.org/idbamerica/index.cfm?thisid=1661をご参照ください。)
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