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IDBダイアローグ 「ラ米における地域統合計画の進展」開催
ラ米諸国経済の現状と展望 「プエブラ・パナマ計画」と「南米地域インフラ統合計画」の進展状況 |
2002年12月4日、当事務所は国際協力銀行(JBIC)及び国際協力事業団(JICA)との定期協議会参加の為、当行ワシントン本部からのミッションが来日した機会に、「ラ米における地域統合計画の進展」及び「ラ米諸国経済の現状と展望」をテーマにIDBダイアローグを開催した。第一セッションでは、米州開発銀行第二地域業務局上席経済顧問マヌエル・アゴシンが、「ラ米経済の現状と展望」につき、第二セッションにて、米州開発銀行第二地域業務局金融支援室アレハンドロ・ロペス・ラミアが、「プエブラ・パナマ計画(PPP)の進展状況」につき、第三セッションでは、米州開発銀行第一地域業務局次長ルイサ・ラインスが、「南米地域インフラ統合計画(IIRSA)」についてそれぞれ講演を行った。参加者約120名。(協力:(財)海外投融資情報財団、(財)国際金融情報センター、(社)海外コンサルティング企業協会、(社)ラテン・アメリカ協会)
各スピーカーによる講演概要は次の通り。
第一セッション:「ラ米経済の現状と展望」
資金流出入の影響
ラ米の経済成長率は1991年〜2000年の間は約3%であったが、1999年〜2002年にはほぼゼロ成長となっている。
ラ米諸国の経済は米国の経済に依存しており、米国経済が今後回復しないと2003年のラ米諸国の経済成長率は1.5%、米国経済が今後回復すれば4%と予想される。近年におけるラ米諸国の経済成長の低下は、金融面では資本流出の現象となって表れている。90年代、ラ米の資金流入額は大きく回復し、国際市場での起債額も伸び、FDI(海外直接投資)の導入額も1989〜1994年の年間160億ドルから1997〜1999年には年間890億ドルにまで増大した。この時期の資本流入の拡大は経済改革を行っているか否かにかかわらず、ほとんど全てのラ米諸国で見られた点が特に注目される。資本流入拡大の結果、実質賃金が上昇し、通貨価値が高くなり、消費と投資の増加が景気を良くした。ラ米主要7ヶ国のGDPの成長率は、FDI以外の資本流出入額の対GDP比率とほぼ連動している。
ラ米諸国で資本流入が「突然停止」したのは、ロシア金融危機が発生した1998年中頃であり、全ての対外資金の動きが影響を受け、ラ米諸国の起債が困難となり、資金の流入が流出に移行し、2001年にはFDIさえも減少し始めた。この結果、地域内の通貨価値の大きな下落がもたらされた。通貨の下落の影響を受けて、消費・投資が悪影響を受け、失業率も増大した。ドル建ての融資返済が厳しくなり、特に、アルゼンチン、ウルグアイでは問題が深刻化している。この様な景気悪化は2000年以降の世界経済成長の下落により、更に悪い影響を受けている。国際投資家の信頼感は大きく低下しており、その為、国内金利も高くなり、これが地域の景気を更に悪化させている。
貿易の影響
世界経済の低迷がラ米地域の貿易にも悪影響を及ぼしている。米国の経済低迷は特にメキシコ(輸出の88%が米国向け)、中米・カリブ諸国、コロンビア、ベネズエラの貿易に悪影響を及ぼしている。その他のラ米諸国は輸出の相手国の多様化を図っているが、世界経済の低迷の悪影響を受けている点で変わりがない。
アルゼンチン、ブラジル、メキシコの現状と課題
アルゼンチンでは、資金の流出が1998〜1999年から始まっている。ブラジル通貨(レアル)の1999年1月の大幅な減価によりアルゼンチン産品の輸出競争力が失われた。アルゼンチンの輸出額の35%がブラジル向けであり、通貨切り下げにより大きな打撃を受けた。この打撃は通貨の兌換法が存在しているため、通貨切り下げを通じての克服が出来なかった。また、アルゼンチンではドル建ての契約が多く、通貨切り下げは多くの企業の破産を誘発することとなるため、避けざるを得なかった。不況の悪化は将来の見通しを暗くし、カントリー・リスク・プレミアムは5〜6,000ベイシス・ポイントまで高まっている。これは、90年代の景気の良い時代に財政赤字是正策がとられず、かつ不況になってからはその対策が打てなくなったためである。過去3年間に財政緊縮策がとられたが、これが経済縮小を強める結果となった。ロシア危機以前に政府債務のGDP比率は41%であったが、兌換法が廃止され通貨の変動相場制に移行した後の2002年6月には159%にまで上昇している。
ブラジルでは、過去10年間財政調整がなされたが、ロシア危機の影響を受けて、GDP成長率が1998年以降、2%以下に落ち込み、これがGDP比債務率を押し上げている。巨額の公的債務はブラジルを危険レベルに追い込んでいる。従って、経済成長を高め、プライマリー財政黒字を増大させ、通貨の大きな下落を避け、適切な金利を維持することが、ブラジルにとって不可欠である。ブラジルが金融危機に陥らないためには、経済成長率を3.5〜5%に高め、プライマリー財政黒字を少なくともGDP比3.75%以上に増大させ、投資家の信頼感を改善して為替レートを適切なレベルで維持し、金利(現在短期レートが21%)を大幅に下げる必要があると考える。
メキシコでは、米国の経済低迷で大きな打撃を受けており、第二次不況に入るとの見通しも予想されている。但し、マクロ経済運営は1994年12月のテキーラ・ショック以前よりはるかに良くなっており、自由変動為替制度、緊縮財政政策、インフレ目標に沿った通貨政策を実施している。また、NAFTA市場への投資が段々進みつつある。メキシコにとっての重要課題は、輸出市場を米国だけに依存するのではなく、多様化することである。
中期的見通し
90年代にラ米諸国が行った改革:@貿易自由化、A民営化、B金融部門の開放等は効果をあげているし、FTAA(米州自由貿易協定)も実現の可能性が高まっている。従って、中期的にはラ米諸国は多くの多国籍企業にとって興味のある市場になると考える。アルゼンチンは競争力を高めて、中期的には経済回復を果たす底力を有している。ブラジル経済は、80年代初頭に比べて大幅に開放され、競争力を高めているので、中期的な見通しが良い。メキシコは中期的将来に高成長経済に戻るための準備がなされていると言える。
第二セッション:「プエブラ・パナマ計画(PPP)の進展状況」
PPPの背景と全般的進展状況
本計画は2001年6月15日開催の加盟国(中米7ヶ国とメキシコ南部9州)の首脳会議で採択された。その後開催されたメリダ・サミットではメキシコ大統領の提起により、人的資源開発イニシアティブをPPPの中心におきかえた。米州開発銀行はPPP金融委員会の中心的役割を果たすとともに種々の積極的な協力を行っている。PPPの2002年における進展状況としては、@域内統合化を計る組織の確立(各大統領任命の執行者の委員会、イニシアティブ毎の閣僚級委員会、特定分野の制度確立のための小委員会の創設)、A具体的統合プロジェクト(SIEPAC(中米電力接続システム)、RICAM(メソアメリカ国際ハイウェイ・ネットワーク)、AMI(メソアメリカ情報ハイウェイ)等プロジェクトの確立、B域内合意
(ハイウェイ統合と教育イニシアティブは、既に合意書(MOU)が締結されており、その他のイニシアティブについてもMOUの内容検討が始まっている)の確立等の進展が挙げられる。
各イニシアティブの進展状況
@ エネルギー統合:
(1)SIEPAC(総コスト3億2,000万ドル。送電線計画の技術的検討がほぼ完了し、未接続部分の送電線建設を2004年迄に着手する。資金については既に米州開銀とスペイン政府が供与をコミットしている。)、(2)メキシコとグアテマラ接続プロジェクト(総コスト4,450万ドル。400kvの100km送電線を建設。資金については、メキシコCFE(連邦電力委員会)と米州開発銀行(3,000万ドル)が供与し、残額は他国際機関からの調達が考えられている。)、(3)グアテマラとベリーズ間接続プロジェクト(構想段階)の3プロジェクトで構成されている。
A 道路統合(道路の法規定の調整を含む):
RICAMが本イニシアティブを実現するプロジェクトであり、RICAMは、(1)太平洋コリドー(3,159km)、(2)大西洋コリドー(1,745km)、(3)第2次道路の建設と接続(4,073km)計画で構成される。8ヶ国が組織、法令、規則及び運営の枠組みを含むRICAMのプロジェクト内容に係る覚書を締結した。
B テレコム統合:
このイニシアティブはIT及びテレコムへの消費者のアクセスを、(1)近代的インフラ開発、(2)共通的なアクセスを推進、(3)民間投資を呼び込むための政策と規制枠組みの策定を通じて、増大させることを目指す。このイニシアティブを実行するプロジェクトとしては、AMI(メソアメリカ情報ハイウェイ)と地域規制枠組み立案プロジェクトが存在する。AMIの総コストは1億ドルにて全額民間投資で充当する考えである。
C 貿易促進:
このイニシアティブの目的は、貿易を増大させることと貿易障害の撤廃と輸出付帯コストの節減による競争力の向上にある。具体的プロジェクトとしては、税関・国境通過手続きの近代化、動植物の衛生基準、原産国ルール、技術的規定の調整、輸出志向の中小企業の育成、地域競争力の向上、地域輸出金融統合等がある。
D 人的資源開発:
関連プロジェクトとしては、地域健康・人的資源開発、メソアメリカ教育向上、メソアメリカ職業訓練情報サービス、先住民地域における生態系包括管理、移民に係る統計情報システム構築等が挙げられる。進展状況として注目されるのは、二週間前に米州開発銀行にて、教育プロジェクトの見直しとその為の資金援助を求める地域委員会を設立する覚書が締結されたことと米州開銀が140万ドルの無償技術支援を供与したことである。
E 持続可能な開発:
このイニシアティブは、地域住民の参加型という仕組みに基づいた持続可能な天然資源の活用を促進するもので、プロジェクトとしては、環境管理システム(PROSIGA)、国境地域の天然資源の持続可能な開発、メソアメリカ・バイオロジカル・コリドー(先住民との相談窓口)、地方農村開発等が挙げられる。
F 災害防止:
このイニシアティブは、公共・民間部門の意思決定者による天然災害のリスクを管理する能力の向上を目的とする。プロジェクトとしては、公共認識の向上キャンペーン、水と気象情報システム、災害保険の創設等が挙げられる。
G 観光:
このイニシアティブは環境にやさしい観光の開発を目的とする。プロジェクトとしては、空港安全強化、観光ルートの統合開発、エスノ・ツーリズム(民俗観光)、持続可能な観光業の認証制度等が挙げられる。(参考)米州開発銀行ではPPPに係るウェブサイト(www.iadb.org/PPP)を設けている。
第三セッション:「南米地域インフラ統合計画(IIRSA)」
IIRSAの背景
IIRSAは第一回南米首脳会議(2000年9月、ブラジリアで開催)にて合意された計画であり、その基本目標は、域内12ヶ国のインフラ統合と近代化を通じて南米諸国経済の競争力の向上と経済社会開発の促進を計るものである。本計画は10ヶ年計画であり、対象となるインフラは、エネルギー、テレコム、交通輸送部門である。基本的コンセプトとしては、対象となるインフラ整備・統合化により、地域的障害を克服し、市場を強化すると同時に、新たな経済機会を生み出すことにある。この為には貿易の自由化と投資の促進策を継続する必要があり、また、関連規定の域内調和と政治面での結束力の強化が必要で
ある。
IIRSAの実施機関
IIRSAの実施機関としては、(1)南米12ヶ国のインフラ・公共事業・輸送担当の大臣で構成される「エグゼクティブ・スティアリング委員会」(計画全般の戦略的方向と政治的意思決定を行う機関)の下に、(2)「エグゼクティブ・テクニカル・グループ」(技術面の政府高官と調整担当官で構成され、規制の枠組み策定、包括的なインフラ・プロジェクトの立案・優先づけ・評価、環境と社会的配慮の導入、コリドー地域の開発促進と合意に基づく協定の実行等を行う)及び(3)「テクニカルコーディネーション委員会」(米州開発銀行、アンデス開発公社(CAF)、ラプラタ河流域開発基金(FONPLATA)がメンバーとなり、IIRSA計画の全般的調整を計る)を設けている。
統合と開発のコリドー
全部で8個のコリドーが存在するが、その内一番進展しているのは、(1)アンデジェクト提案を包括し、調整する域内技術会合が開かれている段階である。
セクター別の統合過程
@ エネルギー:
エネルギー市場統合に向けての規制側面の研究が始まっている。次の段階としては、各国のエネルギー政策立案当局による対話と各国レベルでの立案をまとめることにある。
A テレコム:
規制の枠組み、相互接続による問題点、技術基準、インターネット拡大に関する調整作業の研究が継続して
いる。
B 海上輸送:
沿岸輸送に係る研究が終了し、海上輸送と港湾の効率化の研究が続いている。次の段階としては、域内諸国会合にて提案項目を議論し、提案措置の実行に移すことにある。
C 多様式の輸送:
多様式輸送と貿易の流れを阻害している国内規制のとりまとめと域内規定についての研究が行われている。次の段階としては、各国の調査・研究内容を議論し、勧告をまとめて実行に移すことにある。
D 航空輸送:
規制、航空輸送権、二国間協定についての調査・研究が続いている。次の段階としては、調査内容を議論し、勧告をまとめて実行に移すことにある。
E 金融方式:
2002年5月にブラジリアにて金融方式に関するワークショップが開催された。プロジェクト・スクリーニングと国境を超えるインフラ・プロジェクトの金融枠組みの立案についての研究が継続中である。
F 国境通過:
施設・法規・物流上のボトルネックを明確にし、具体例として選ばれた国境通過での標準化された行動を設計する研究が行われている。
G 共通戦略ビジョン:
南米諸国のインフラ統合プロセスに向けての共通戦略ビジョン策定の調査・研究が行われており、次の段階としては、2003年3月にカラカスにて開催予定の第4回エグゼクティブ・ステアリング委員会会合にて、種々の提案事項が発表されることとなっている。
将来に向けての課題
・ 地域内のインフラ開発のために包括的アプローチを実施すること。
・ インフラ・プロジェクトの金融・建設・運営に民間部門の積極的参加を求めること。
・ インフラ・プロジェクトの開発に公共・民間パートナーシップ(PPP)を促進させること。
・ コリドー内の主要プロジェクトに投資を集中させること。
・ プロジェクトの設計段階から環境と社会への認識を高めること。
・ 南米地域としてグローバルな競争力向上をもたらせること。
これらの課題はどれをとっても簡単ではないが、全ての参加国政府と関係機関が力を出し合えば、IIRSAはこれらの課題を克服して、必ず実現されるものと信じている。
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