地味なカバーの本
ブラジルの鳥に関するフィールド・ガイドはオウギワシのように手に入りにくい

 

ロジャー・ハミルトン

 「もしもし、ブラジルの鳥のフィールド・ガイドは要りませんか?」

 他のエコツーリストの妬みを買わないよう、彼らには気付かれないエコロッジの薄暗い片隅で、こんな具合に取引は行われた。

 羽の色がブラジルの国旗の色のオウムが表紙を飾るこの小さなペーパーバックは、なかなか手に入らない人気の品となっている。ポルトガル語版しかないが、それは問題ではない。ブラジルの鳥だけを扱った唯一の専門フィールド・ガイドで、すでに絶版となっているものだ。

 実のところ、Todas as Aves do Brasil: Guia de Campo para Identificação(ブラジルの全ての鳥:フィールドガイド)は、画期的な著作というわけではない。著者のデオダト・ソウザ自ら、序文でその欠点を認め、挿し絵の質について詫びている。それでも本は、知識満載でとても役立つガイドとなっている。本を手に入れた人たちは珍重している。

アマゾン・ドット・コムでは入手できない一冊

 ブラジルの鳥に関するフィールド・ガイドがほとんど存在しないことで困っているのは、少数の変わり者の自然愛好家ばかりでない。エコツーリストと呼ばれる自然愛好家の旅行者は、その大半がバードウォッチャーである。エコツーリズムは、ラ米を含め、世界各地で成長著しい経済セクターとなっている。ブラジルは、米州開発銀行の資金援助を得て、アマゾン地域の大規模なエコツーリズム・プログラムを開始した。プログラムは現在準備段階にあるが、今後インフラストラクチャーの整備に資金を供与して、将来のエコツーリズムの拡大を目指す。

 しかし、エコツーリストに必要なのは、空港やホテルなどの物的インフラストラクチャーだけではない。その土地の動植物に関する本など、知的側面でのインフラストラクチャーも必要である。ツーリストの楽しみは、彼らがどれほどの知識をもって活動に臨むことができ、また活動からどれほどの知識を得ることができるかに直接関係してくる。米国には、大学生も圧倒されるような自然や科学の主題に関する書籍のリストを顧客に提供している大規模なエコツーリズムのウェブサイトがひとつある。

 大半のエコツーリストやバードウォッチャーにとって、自国語の優れたフィールド・ガイドがあることが、旅行を計画する上で唯一最も重要な必要条件である。ベネズエラ、エクアドル、コロンビア、キューバ、コスタリカ、メキシコ、パナマ、その他ラ米・カリブ海諸国の鳥に関してはガイドが揃っていて、中には非常に勝れたものもあり、しかもすべて英語で書かれている。しかしブラジルのものとなると、ソウサの本が唯一の選択肢である。

 「ブラジルの鳥について新しいフィールド・ガイドが出れば、エコツーリズムにとって重大な分岐点となるだろう。」と、探鳥ツアー専門の大手旅行会社の創設者ヴィクトール・エマニュエルは指摘する。質の高い英語のガイドが欧米の書店で簡単に入手できるようになれば、エコツーリストがブラジルを旅先に選ぶ強力な誘因となるだろう、とエマニュエル氏は言う。

 また、ポルトガル語でも、もう少し質のよいブラジルのフィールド・ガイドが出れば、それがもたらす利点も大きいだろう。バードウォッチングを通じて自然に関心を持つようになる人は多い。ブラジル国内でも、フィールド・ガイドがあれば、自然観察を楽しむ人が増え、自然保護に対する国内の支持者が大幅に増えるだろう、とエマニュエル氏は付け加える。

 そこでよい知らせがある。ブラジルのフィールド・ガイドの準備が進められている。とは言え、出版されるまでにはあと4〜5年かかりそうだが。この本は、ツアー・リーダーで作家のケヴィン・ツィマーと、マナウスに本拠を置くアマゾンの鳥の専門家アンドリュー・ホイッテェィカーの二人の鳥類学者が執筆にあたっている。

 プリンストン大学出版会のシニア・エディターであるロバート・カークによれば、この本は、詳細なテキストと地図を収めた大判の参考書と、簡単なテキストと地図、そしておよそ190枚のカラー刷り図版を収めた小さめのフィールド・ガイドの2巻組となるだろうとのことである。資金調達ができれば、最終的にポルトガル語版の刊行もあり得る。

 しかしそれまでは、「もしもし、誰かブラジルの鳥のフィールド・ガイドを買いたい人はいませんか。」という状況もやむを得ぬことなのだろう。

 

 


 


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