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ブラジルのアマゾン流域でのエコツーリズムの活性化
アマゾン流域の9州が連合して自然生態系の優れた経済的価値を立証 |
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| ブラジルのアマゾン流域のエコツアーの中心地は、最高の観光名所、よく整備されたインフラ、そして強力な地元のサポートを兼ね備えている |
ロジャー・ハミルトン
森の空き地の日陰で、コンクリの土台から先端の展望台まで50メートルある鉄塔を目を凝らして見上げているのは、ブラジルの観光事業の役人と国際的な専門家の一行である。それは、その日の午後の現地視察のクライマックスとなるものだった。支え線がきしきし音を立てて動くたびに、鉄塔はわずかながら揺らぎ傾いだ。
この塔を建てたのはマトグロソ州にあるエコロッジだが、それにはもっともな理由があった。雨林では生き物の大半は樹木の上で暮らし、木々の葉が太陽光線を、その動植物達にパワーを与えるエネルギーに転化するのである。地上で観察しても、数多くの素晴らしいものを目にすることができるだろうが、森がその驚くほどの生物多様性を示すのは高い木の上でのことである。
トカンチンス州から来た若い観光行政官が一歩前に踏み出した。ラップトップのストラップを調節して、まるで征服者かのような決然たる態度で鉄塔の階段に挑んだ。
しかし他の者の中には、エコツーリズムを実際に体験するよりはむしろホテルに戻って会議室で議論したいと明らかに願っている様子の者もいた。彼らは、上を見上げることも、下を見下ろすこともなく、汗ばんだ手できゃしゃな手すりを握った。
アマゾナス州の女性行政官は、何とかわずかに昇ったところで階段に腰掛けてしまい、他の者に道を譲った。エコツアー・ロッジのオーナーは数段高く昇り、ため息をついて一休みした。3箇所ある展望台のもっとも低い展望台で断念することにした本記者を抜かしてさらに先に進んでいったのは、米州開発銀行の環境専門家である。
最終的に、高所恐怖症の程度によって振り分けられたが、鉄塔には、ブラジルのアマゾンを沈滞したエコツーリズムの地から世界一流の観光地に変革しようという新たなプログラムに取り組む主役の大半が昇ることができた。
偶然出くわすのを待てばよい
ブラジルは、エコツーリズムのパラドックスである。アドベンチャーと豊かな生物多様性のイメージを彷佛させる世界的に有名なアマゾン川の主要部分が、ブラジル国内を流れている。とは言え、エコツーリストを引きつける観光地としては、ブラジルは、中南米の一部隣国に比べてはるかに遅れている。アマゾン流域の都市マナウス近隣のエコロッジ群やリバー・クルーズの他、いくつかのエコツーリズムの観光地を除いて、ブラジルの自然観光事業はまだ未発達の段階にある。
「ブラジルのアマゾンに匹敵するようなところは世界中どこを探してもない。」と言うのは、米国の自然観光会社インターナショナル・エクスペディションズ・(インク)の社長で創業者のリチャード・ライルである。「そこに座って偶然出くわすのを待ってればいい。」
ただ問題なのは、第一に、アマゾンに行くのが大変なことである。例えば、米国人がマトグロソのこのロッジに行きたい場合、ロッジにもっとも近い町に行くだけで2日間を要する。悪天候でローカル・フライトが飛行禁止になれば、さらに1日かかる。その町からロッジにたどり着くのにも、車とボートで半日の旅行だ。
もうひとつの問題は、マーケティングである。個々のエコロッジは、世界各地に分散するエコツーリストの関心を集めるには、規模があまりにも小さい。地方自治体や州政府も、それぞれの環境保護の観光地を宣伝するには、その経験と情報の両方に欠ける。従って、エコツーリストは、多くの場合、自分達で旅行プランを立てなければならないのが現状となっている。しかし、米国の書店には、小国のコスタリカの旅行ガイドは6冊も揃っていて、そのうちの数冊は自然を呼び物とする観光地を特集したものであるのに対し、ブラジルを訪ねたいという旅行者向けのガイドブックはわずか1、2冊しかない。さらに−熱心なエコツーリストの大半を占めるバードウォッチャーにとってとりわけ重要な点であるが
−ブラジルの野鳥についての検索図鑑はほとんどない(ECOTOURISM、 地味なカバーの本を参照)。
起こりつつある変化
その日展望台に勢揃いした人々は、ライル氏の指摘するとおり、ブラジル・アマゾン川の「活性化」に携わっている人たちである。彼等は現在、交通、訓練、マーケティング、その他の領域への投資を通じてエコツーリズムの確固とした基盤作りを目指す長期プログラムの第1段階に懸命に取り組んでいる。アマゾン川を観光客にとってはより楽しめる場所に、企業家にとってはより利益の上がる場所にすることが目的である。
このプロエコツール・プログラムは、1999年に承認された1,100万ドルのIDB貸付を第1段階の資金調達源に実施されているものであるが、研究調査と計画立案がその主な内容となっている。ブラジル国内アマゾン流域の9州が参加し、首都ブラジリアの連邦環境省に置かれている事務局が全体の指揮に当たっている。
技術援助資金供与を活用して、各州は、エコツーリズム戦略の策定、エコツーリズムに関する規則の強化、市場の需要評価、主要自然保護地域の管理計画の立案を進めている。プログラムは、エコツアー事業者に対する助言サービスと、およそ1,000人にのぼる州政府や地方自治体の役人その他地元のリーダーを対象とする教育訓練に、資金を供与している。また、自然保護地域の保全や地方観光事業の障害の解消に、少額の当初投資が使用される計画である。
さらに、今後数年以内に実施が期待されている第2段階で資金調達が予定されているはるかに大規模なインフラ投資のフィージビリティ調査の準備にも、プログラム資金が投じられる計画である。
大半のプロエコツール事業は、現在も今後も、5つの優先地域で実施される予定である。5地域は、面積66,900ヘクタールから441,600ヘクタールまでと、大小さまざまである。これらの「エコツーリズムの中心地」は、その天然資源、交通の便、既存のホテルなど宿泊施設、ならびにプログラムを支援する地方政府およびその他団体の熱意を考慮して選ばれたものである。地元レベルでの計画立案の大半は、民間の企業家、政府役人、市民社会の代表で構成される運営委員会によって実施されている(ECOTOURISM、
使命に燃えるビジネスウーマンを参照)。
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| 鮮やかな色は注意が必要。この小さな蛙の外皮はきわめて有毒 |
今後数十年にわたり、エコツーリズムは、アマゾン流域の2,000万人の住民の多くに雇用と安定した収入をもたらすであろう。エコツアー・ロッジや交通機関あるいは飲食関係のサービス業、その他活動に直接雇用される者もいるであろうし、また多くの人が間接的に利益を得るであろう。
エコツーリズムがもたらすもうひとつの利点として、自然生態系の保護への取り組みが強化されるであろう。自然林が観光客を引きつけることで収益をあげることができれば、地元の住民も森林を大豆畑や牛の放牧場に転換することへの反対を有利に進めていくことができるだろう。エコツーリズムはまた、保護地域における規制実施のためのレンジャーに支出する財源を政府にもたらすであろう。
生物学者、経済学者、倫理学者は自然の生態系保護について説得力ある議論を行うことができるが、地元政府の役人や企業家の支援は多くの場合決定的な役割を果たしうる。
チームワーク
プロエコツールは、その運営管理のみならず、展望台に昇りあるいはジャングルの中を流れる川を航行する間に形成される人間関係によってもその成功が決まるという、複雑なプログラムである。
「州、地元住民、中央政府、そして我々の財源であるIDBと、これらすべての人がこれほどまでにひとつのチームとして機能するプロジェクトに、これまで関与したことはない。」とマトグロソ州政府の役人のひとりが指摘する。
プロエコツールのグループは、アルタフロレスタの町、50ヘクタールの森林の中にあるホテルで会議を始めた。開け放された窓の外にある木には、クモザルの群が集まり、こちらを見ていた。
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| エコツーリズムの製品を市場に出すことが仕事、と語るソアヴィンスキー氏
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プロエコツールのコーディネーター、リカルド・ソアヴィンスキーが問題のリストを読み上げた。ある州では、資金調達の認可が議会で行き詰まっていた。「このプロジェクトがひとつの州あるいは数名の議員のせいで遅れるようなことを認めるわけにはいかない。」とソアヴィンスキー氏は強調した。資金調達のためにプロジェクトの準備が遅れている州もいくつかあった。「プロジェクトの準備ができなければ、その州は除外せざるを得ないだろう。」と彼は警告した。
海洋生物学の教育を受けたソアヴィンスキー氏は、ブラジル人特有のざっくばらんさと実際的な効率を上手く組み合わせて、会議を運営した。
プロエコツールの活動用に購入されたコンピュータや車が各州に届いているとの報告を受け、ソアヴィンスキー氏は満足した。がしかし、一部の州では、政府高官がそれらを他の活動に勝手に使用していることを知り、遺憾の意をあらわにした。これは、プロエコツールの契約条項により厳しく禁ぜられていることである。「問題があれば、知らせてほしい。措置を講ずるので。」とソアヴィンスキー氏は政府役人に述べた。
会議を終えたソアヴィンスキー氏は、この新しいプログラムのより大きな目標について次のように考えを述べた。「エコツーリズムは、森林を保護すると同時に、生活を改善することができることを地元住民に実証するものとなるだろう。これは、プログラムの目的のひとつであり、おそらく主目的である。自然保護を進めながら生活様式の保全にも努めたい。」
「これまでは、アマゾン流域での大規模プロジェクトの目的は、正反対のものであった。」と同氏は指摘する。
新しいプログラムは、ブラジルの環境保護論者の考えを具現化する手助けをするものである。「ブラジルでは一般に、自然保護の必要性について理解は大きい。」とソアヴィンスキー氏は述べる。「しかし困難な点は、必要な知識を得、それを実行に移すことである。」プロエコツール・プログラムは、進むべき道を示すものとなるだろう。「アマゾン川は、エコツアー製品として強力なブランド名だ。」とソアヴィンスキー氏は言う。「我々の仕事は、製品を市場に売り出すことだ。」
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