IDBダイアローグ
「ペルーの経済政策と展望」

ペルー経済をめぐる環境とこれまでの政策の成果   

 

  2002年1月24日、当事務所は、外務省の招聘でペルーから来日中のクルト・ブルネオ経済財政省財政担当次官をスピーカーに迎え、IDBダイアローグ「ペルーの経済政策と展望」を開催した。参加約100名。(協力:(財)海外投融資情報財団(JOI)、(財)国際金融情報センター(JCIF)、(社)海外コンサルティング企業協会(ECFA)、(社)ラテン・アメリカ協会(LAS))

 クルト・ブルネオ次官によるスピーチの概要は次の通り。

政治環境

 パニアグア暫定大統領からトレド大統領への政権移譲は秩序正しく順調に行われた。大統領選挙は、非常に公正で透明性の高いもので成功裡に実施された。新政権の主要な公約の一つは汚職の撲滅である。また、大統領選挙運動中に行われたアンケートで一番望まれたのが雇用であり、トレド大統領はペルー国民に対する質の良い雇用機会の創出を主要な公約に掲げている。トレド政権は、経済改革が政治社会問題の解決に寄与するとの考え方を重視し、90年代半ば以降、成功裡に実施された経済政策を継続すると共に、経済の刺激に必要な貿易自由化、国家改革など懸案の構造改革を引き続いて推し進める強い決意を打ち出している。議会の連立関係から、対話と議論の促進により、改革法案の議会通過が期待されている。トレド政権は、常にコンセンサスを求める政治を優先し、国民の長期的な支持を得ようとしている。政治の安定はペルーのガバナンスを高めると考えている。

ペルーを取り囲む国際環境

 昨今の国際的な景気低迷による一次産品国際価格の低下は、ペルーにとってマイナス材料であるが、その影響は極めて深刻なものではない。ペルーは石油輸入国でもあり、石油価格の低下はプラスである。国際的に金利は低下傾向にある。これはペルーにとって好材料である。LIBORの1%低下は、ペルーの債務金利負担を年間9,000万ドル軽減させる。ペルーのカントリーリスクを国債スプレッド(米財務省証券とのスプレッド)でみると、2000年の9月から2001年の4月頃まで拡大したが、トレド政権になってから、縮小し始めている。このことは、外国投資家がペルーの経済運営に対する信頼感を増していることを示している。ペルーの国債スプレッドは、現在500bp(ベイシスポイント)前後でラ米平均の700bpを下回っている。また、為替レートも他のラ米諸国に比べ変動が少なく非常に安定している。財政・通貨政策運営の良さの証左と考えている。中銀はインフレ目標を設定している。為替レートも加味しながら、市場に対する通貨供給量を調整している。最近の為替レートは、ドルに対し強含みとなっている。現在、ペルーの外貨準備高は87億ドルで安定している。今後ともこの水準を維持しつつ、為替レート安定化を図ることができると考えている。インフレを見ると、最近、物価上昇率は低下傾向にあり、2001年12月には
-0.1%とマイナスとなった。その後、物価下落は是正され、現在は年率2〜2.5%の上昇で安定している。貸出金利については国内通貨建て、海外通貨建ていずれも低下。これは企業の競争力向上につながると考えている。

ペルーにおける経済回復の開始

 トレド政権の最優先政策は、民間部門における雇用創出促進に向けた経済活性化であるが、毎月の国内生産(GDP)を見ると、トレド政権になってから拡大に転じ、経済回復の兆しが見える。GDPの伸びにより、今後、財政支出を増やすことができると考える。2001年の財政赤字はGDP比2.4%であったと推計されるが、2001年は1.9%に赤字幅を縮小させることを目標としている。国内生産の拡大は鉱業部門にとどまらず全般に及んでいる。GDP寄与度をみると、非一次産品部門(工業、建設業、サービス業)が予想外に伸びている。非一次産品部門活動の変動がGDP全体の変動を大きく左右し、雇用状況にも影響を与えている。税収も85%は非一次産品部門が生み出している。現在、この非一次産品部門で活性化が始まっている。建設業も非一次産品部門に属するが、2001年11月、12月には各々8%、6%伸びている。過去2年間ほとんど実績のなかった公共投資がトレド政権下で伸びたことがその要因となっている。雇用についても、トレド政権移行後大幅な拡大がみられる。こうした雇用拡大維持のためには民間投資の役割が重要である。経済成長は内需の拡大に支えられている。内需の伸びを反映する付加価値税税収額はこれまで一年以上ほぼ連続して毎月対前月比でマイナスが続いていたが、マイナス幅は、徐々に縮小し、2001年11月には4.2%のプラスに転じている。

IMFに対するLetter of Intention

 ペルーの国内貯蓄額は少なく、投資需要を満たすことができない。したがって、海外からの借入れが必要である。そのためペルー政府はIMFとの政策協議を行うこととした。政策協議を経て、合意が成立。経済プログラム案が作成されたところである。現在IMFの最終的な理事会承認を待っている。この案は、ペルーが2003年までに実施する経済プログラムを示したものであり、慎重なマクロ経済運営が謳われているが、最も重要な事項は中断していた構造改革の再開である。構造改革の中でも、国家の近代化、税制改革、民営化が重要だが、その最終的な目標は経済効率を高めることにある。経済効率が向上すれば企業競争力強化の条件が整い、民間部門活性化につながる。

 IMFに提出したletter of intentionの概要は次の通り。

 @財政政策−中央政府・国営企業の財政赤字目標を2002年GDP比1.9%、2003年1.4%とする。ただし、2002年の民営化収益が7億ドルを越えた場合には、財政赤字の目標をGDP比2.2%まで緩和し、インフラに対する追加投資を可能にする。中央政府税収を2001年GDP比12.1%から2003年12.6%に増加させることを目標とする。

 A金融・通貨政策−金融・通貨政策は経済成長率、インフレ率、国際収支目標と整合性のあるものとする。中銀は今後も自由変動為替制度を維持する。変動を小さくし、安定した為替レートが続くように努力するが、先物市場に対する介入は引き続き行わない。

 B構造改革−構造改革には、税制改革、民営化・コンセッション供与、銀行監督強化、国家財政責任法改定、地方自治体による財政自立化支援、公的・民間年金改革、西半球(米州)自由貿易地域に対するペルーの参加を可能にする貿易体制調整、公的部門効率化、民間部門活性化等が含まれる。なお、現政権は、民営化の目的は、従来のような単なる財政収入増加にとどまらず、サービスの質の向上、料金値下げといった、経済の効率化にあると考えている。民営化は経済効率化の一手段である。

 Cマクロ経済指標目標−GDP成長率:2002年3.7%、2003年5%。投資:2002年公共部門投資GDP比3.1%、民間部門投資15.7%。更に、2003年には各々3%、16.4%と民間部門投資を拡大させる。消費者物価上昇率:2002年2.5%、2003年2%。外貨準備高:2002年末87.13億ドル、2003年末88.33億ドル。GDP比財政赤字:2002年1.9%、2003年1.4%。

結論

 現政権は財政収支目標を達成しながら、社会支出を最大限に満たす方針。健全で安定した経済成長に基づいて財政の拡大を図ることを中期的戦略としている。トレド政権の経済改革が目指すものは、第一に経済成長であるが、最終的には、(経済成長を通じて)人材開発、所得格差是正、環境保全を進展させることにある。幸いにも、ペルーは前進しており、不況から脱出しつつある。アルゼンチンペソ切り下げの影響も、アルゼンチンとの貿易関係が小さいペルーにとっては、さほど大きくないと考えられる。ペルーは、最終目標達成に向け着実に成果をあげつつあると考えている。

 

 


 


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