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危険な処方箋
腐敗がラ米の公立病院に悪影響を及ぼしていることが 新たな調査で判明 |
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| 病院の待合室での長い待ち時間は、腐敗の兆候かもしれない |
ポール・コンスタンス
腐敗があなたの健康を冒すことがあるだろうか。次のシナリオを考えてみよう。激しい腹痛を訴えている女性が公立の大病院の救急室に運び込まれる。女性は4時間も待合室で待たされた。当直であるはずの医師のうち2名が実際には民間の診療所で勤務についていたからである。ようやく診察を受けた時には、命にかかわる状況にまで悪化しており、強力な抗生物質といくつかの特殊検査が必要な状態に陥っていた。病院の薬局の記録では抗生物質は在庫があったが、担当医は不可解なことに在庫は消えてしまったと聞かされた。女性の親戚には、他の供給源から薬を入手するのに特別料金が必要だと伝えられた。また、診断のために必要とされる検査は、街の別のところにある民間の病院でしか受けられないとの話があった。
医師の欠勤、薬の盗難、特別料金、疑わしい照会、これらの慣行のひとつひとつは、危険かつ悲惨な結果をもたらす危険がある。いずれも、公共資源の盗難、詐欺、乱用を規制できなかったことによるものだ。すなわち、腐敗がその原因となっている。
ラ米の人々は、腐敗は政治にとって悪であり、民主制を弱体化し、さらには経済成長をも阻みうるものと、長年にわたり考えてきた。しかしながら、IDBのラテン・アメリカン・リサーチ・ネットワークが最近発表した国別調査報告集「Diagnosis Corruption」(診断腐敗)には、かかる悪弊に影響されることはないと多くの人が考えているセクターにおいても腐敗の影響が見られるとの詳細な証拠が提示されている。腐敗は、多くの場合、政治運動の資金調達、通関手続き、公共工事の契約に関係したものであるが、病室でも行われているなどとは思いもしなかったことである。実際、「Diagnosis Corruption」に報告されている研究の一環として行われた調査で、ラ米数ヵ国の人々は、社会において腐敗にはもっとも縁遠い、すなわち大統領や警察よりはるかに不正行為の少ない機関として、公立病院を挙げている。
しかしながら、IDBが資金援助した研究チームが域内6カ国で患者、医師および看護婦にインタビューしたところ、公立病院でも不正行為が横行していることが明らかとなった。もっとも頻繁に行われている悪弊として調査回答者が挙げたものは、医療品の窃盗、物品・サービスに対する違法な料金や法外な料金、医師や看護婦の常習的欠勤、個人的な医療行為のための公共設備の無許可での使用などであった。回答ではまた、病院スタッフの選任や昇進におけるえこひいき、民間の開業医への不必要な照会、不必要な医療処置を受ける勧誘などの悪弊も明らかにされた。
これらの悪弊は、「政府の資源を横領し、必要とされるケアを提供する保健医療制度の能力を弱めるものである。」と、「Diagnosis Corruption」の編者であるラファエル・ディ・テラとウィリアム・D・サヴェドフはその序文で記している。これらの悪弊は、また、民間の保健医療サービスを受ける経済的余裕のない数百万人の人々の健康と福祉を脅かすものでもある。
認識と客観的データ
腐敗に関する一般の議論の多くを特徴づけている主観性に対して、「Diagnosis Corruption」は、解毒剤の役割を提供している。腐敗については、近年ますます懸念される問題として注目を浴びてきているが、腐敗防止の努力は、逸話的な情報や偏見のある情報に基づくものではないかとの印象を受けて、苦戦している。例えば、ドイツに本拠を置く非営利の政策提言グループであるトランスパレンシー・インターナショナルが年1回発表し、広く議論されている腐敗認識指標は、国際的な経営者やリサーチ会社の意見に基づいていることから、一部評論家により不正確な指標として一蹴されている。
この点を改良するべく、「Diagnosis Corruption」では、公立病院によく行く人や働いている人の日常の体験および病院の調達記録に基づきデータを収集した。IDBは調査をアルゼンチン、ボリビア、コロンビア、コスタリカ、ニカラグア、ペルーおよびベネズエラの研究者チームに委任した。研究者に対しては、公立病院で行われている主な腐敗の種類を特定し、不正行為のコストを概算し、かかる悪弊を規制するための方法について各種仮説をテストするように依頼した。数千人の医師、看護婦および患者との面談に加え、アルゼンチン、ベネズエラ、ボリビアおよびコロンビアの研究者は、各種備品に病院が支払っている価格に関するデータも取得し、分析した。
この結果、詐欺行為と悪弊の驚くべき実態の詳細が明らかとなった。各種悪弊の重大さは国によって大きく異なるが、調査の対象となった国はすべて、下の表のような腐敗の問題を抱えていることが明らかとなった。
コロンビアのボゴタにある32の公立病院だけで、数種類の特定の薬剤および備品に対する過払いが、年200万ドルにのぼると推定されている。これは、新たに数千人の患者に基本的な医療を施すに十分な金額である。病院が購入した全種類の製品について乗算してみれば、過払いの影響は数億ドルにのぼるものと思われ、国民の相当数が十分な医療も受けられない国にとって、甚だしい損失である。
公正さの代価
理想主義と他者に対する思いやりに動機付けられているはずの看護婦や医師に、なぜそのような悪弊が横行しているのだろうか。腐敗は倫理基準が総じて減退したためと憶測する代わりに、IDBが資金援助した研究者は、病院という環境でどのような要因が公正な行動を奨励し、あるいは妨げるのかを調べ始めた。研究者は、人々は不正行為の費用・便益を比較検討した上で、自身の誠実さと周囲の不正に対する姿勢に左右されながら、もっとも少ないリスクで最大の便益が得られる行動をとる傾向にあるという仮定に基づいて作業をした。
例えば、病院の雑役婦が、薬剤を盗んで捕まるリスクは高く、捕まった場合には明らかに仕事を失うと判断した場合は、盗みを考える可能性は低い。しかしほぼすべての国で研究者が発見したことは、この「発覚する確率」が大半の病院において比較的低いということであった。さらに悪いことには、処罰される可能性も低い傾向にあることが明らかとなった。「公立病院における腐敗の主たる原因は、刑罰を免れることであろう。」とディ・テラとサヴェドフ両氏は結論付けている。
実際、刑事免責は、監査やその他管理により発覚の確率が増大したとしても、腐敗を促進しうるものである。例えば、アルゼンチンでは、保健担当職員が、標準的な病院用品の最低価格のリストを発表して、病院の備品の過払いを規制しようとした。これらの「参考価格」が発表されると、病院の職員は、過払いで捕まる危険性が高くなったとおそらく危惧したことから、「調達価格が大幅に下落した。」とディ・テラとサヴェドフ両氏は報告している。「しかし6ヵ月後には、さまざまな調達価格が再度横行した。」と両氏は続けた。「これはおそらく、調達担当者が、実際のところ価格情報が処罰や制裁には使用されていないことを知ったからであろう。」
同様に、高給は、不法な手段により所得を増やそうという役人の衝動を抑えることから、官僚機構における腐敗を阻むものと伝統的に考えられてきた。しかし発覚の確率ならびに処罰の確率が低ければ、この説ももはや有効ではない。ベネズエラでは、病院の調達担当官の高給は、実際のところ高い腐敗レベルと関連していることが調査で明らかとなった。
原因から解決法まで
当然のことながら、発覚のリスクを高め、免責を減少させる方法は数多くある。基本的な会計管理や外部監査は、財務上の不正を減少させる。医療職業団体や組合は、倫理基準を制定し、制裁を課すことができる。患者を代表する目的のコミュニティ病院審議会は、苦情を伝え、改善を求めて圧力をかけることができる。
「Diagnosis Corruption」は、この種の規制によってラ米の公立病院における不正を効率的に防止できることを示す暫定的証拠を提示しているが、かかる基本的な措置がなぜまだ広く採用されていないのかについては明らかにしていない。ひとつ考え得る答えは、公衆衛生サービスが相変わらず比較的好ましい評判を得ていることに示唆されるように、一般市民も政治家も単に医療保健制度における甚だしい不正行為や悪弊に気付いていないということなのではないだろうか。
ディ・テラとサヴェドフ両氏は、「Diagnosis Corruption」の序文を次のように結んでいる:「政治家も政策立案者も、大衆の信頼のもっとも重大な違反に注意を傾注し、不正な行動を阻止する政策およびメカニズムを策定するために、必要な情報にアクセスできなければならない。」「Diagnosis Corruption」は、目的を明確にし、問題の詳細を明らかにすることにより、ラ米においてより優れた公正な医療保健を求めて闘う人々に役立つものであろう。
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