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| 経済的側面を超えて
エコツーリズムは、利益を上げるばかりでなく、コミュニティを助け、自然を保護することを目指すものである
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| ボリビアのトゥイチ川にて:地元住民と環境の支援は、エコツーリズムの課題のひとつである |
ロジャー・ハミルトン
利益を上げ、従業員への給与の支払いに加えて、地元のコミュニティを支援し、自然を保護しなければならないと、ビジネスマンに説いている場面を想像してみよう。
おこがましい話だ。しかしエコロッジやエコツーリズムの事業主の大半は、彼らが重要と考える価値観を推進することを少なくともひとつの目的に、事業を始めている。
「地元住民との協力なしには、エコツーリズムは成り立たない。」と、ペルーのレインフォーレスト・エクスペディションズの創業者であり共同所有者であるエドゥアルド・ニカンデルが、最近開かれたIDBセミナーで語った。同社が経営する2つのエコロッジは、地元先住民社会との共同経営事業として運営されている。「地元住民と知り合いになり、酒を飲み交わし、どこに行くにも一緒に行動している。」
主流の観光事業とはまったく異なる世界である。「コミュニティに行くのにフォー・シーズンズ・ホテルを期待する人は誰もいない。」と語るのは、IDBの支援によってボリビアでエコツーリズム・プロジェクトを実施している団体であるコンサベーション・インターナショナルの元エコツーリズム・ディレクター、オリバー・イレルである。
しかし、とりわけ、プロジェクトのすべてまたは一部を地元コミュニティが運営する場合、事は容易ではない。部外者がコミュニティ・プロジェクトを熱心に推進するものの、地元住民にプロジェクトを実施する能力が本当にあるかどうかの分析にはほとんど手をつけない場合に、問題が発生しうる。かかる評価が行われれば、長期の助成金やソフト・ローンの支援がない限り、プロジェクトの多くは数年で失敗に終わることが明らかとなろうと国際エコツーリズム協会(TIES)のミ−ガン・エプラー・ウッズ会長は指摘する。
雨林の真っ直中で最高級の外国人観光客相手に商売する企業と同じくらい解決の難しい問題に、コミュニティは四苦八苦している、というのが現状である。この問題を切り抜けるひとつの方法は、コミュニティの役割を株主の役割に限定して、経営は他に任せることである。これを実践しているのが、ワシントンDCに本拠を置く組織、トロピカル・ネーチャーである。トロピカル・ネーチャーは、例えば、エクアドルでは、所有権の51%を独立した非営利団体に、残りの49%をコミュニティに与えているプロジェクトを後援している。
「コミュニティの住民に何をすべきかなどと指示するようなことはしたくないと思っている彼らは、この取り決めに満足している。」と、トロピカル・ネーチャーのピーター・イングリッシュ会長は言う。「彼らは、自分の隣人のおじさんを解雇しなければならないような地位に就きたいとは思っていない。」
情熱と利益のための自然
エコツーリズムのもうひとつの主たる目的は、自然保護である。確固たる経済的正当性がなければ、大半の政策担当者は広大な「空き地」を野生の動植物のために保存しておくことにほとんどメリットを見出さないだろう。しかし、森林が消滅した場合、観光産業もそれと共に消滅することを知れば、知事の気持ちも変わるかもしれない。
この一見単刀直入な主張も、必ずしも簡単にできるというものではない。国立公園の概念が形成された米国でさえ、アラスカの広大な区域を自然保護区として保護するという1980年のジミー・カーター元大統領の決定は、アラスカ州民の怒りを誘い、元大統領の人形にビンが投げつけられる事態にまで至った。しかし今日、アラスカ州は、自然観察ツアーを中心に、観光事業で年間10億ドルの収益をあげており、かつて批判した人々も、カーター元大統領は正しい決定を下したと不承不承ながら認めている。
ラ米では、自然保護地区の擁護者が、説得力ある経済的事例を説明し始めたばかりである。IDBの資金供与によるエコロッジをはじめ、ボリビアのマディディ国立公園で事業を展開している多くのエコツーリズム会社は、保護区が観光収入をもたらしうることを立証している。ブラジルでは、進取的なロッジ経営者が州に働きかけて広大なアマゾン森林の保護に寄与した。エクアドルでは、破壊されやすい雲霧林を縦断する新たなパイプラインの敷設に反対する者たちが、プロジェクトは今後20年間に6億ドルの収益をもたらすと推定されるエコツーリズム産業を脅かすものだとの主張を押し進めている。
コミュニティ・レベルでは、地元住民は一般に自然地区の保護に賛成である。「自然地区は彼らの家であり、そのままにしておきたいと願っている。」と、トロピカル・ネイチャーのピーター・イングリッシュは言う。同組織のエクアドルでのプロジェクトでは、領土の大半において伐採搬出、狩猟、大きな魚の漁を禁ずる土地利用計画を、コミュニティが策定した。「エコツーリズムは、コミュニティに土地保全の選択肢を与えるものだ。」とイングリッシュ氏は述べている。
しかし、住民が貧しく、選択肢に欠けると、実利性が感傷性に勝る。「住民は、ラジオ、ランタン、米その他必需品を買うお金がほしいのだ。」とイングリッシュは説明する。世界経済が減速し、観光客が来なくなれば、影響は直ちに出てくるだろう。他に経済的選択肢がなくなった住民は、再び森林の伐採を始めるものと思われる。
同じ事が民間の起業家にも当てはまる。競争が熾烈でかつ収益性の低い環境においては、多くの場合、理想は二の次となり、財政面での生き残りが優先されなければならない。「自然保護を目標としながらも、生き残るためにはそれをごまかしているのだ。」と国際エコツーリズム教会(TIES)のエプラー・ウッズ会長は言う。
危険は、観光客が少な過ぎるのではなく、多過ぎる場合にもある。エコツーリストのプロジェクトを計画する上で最初に提起される問題のひとつは、どの程度の人数であれば、自然を破壊することなく観光客は自然を体験することができるかである。しかしこれは、単に人数の問題ではない。国際的な旅行会社であるインターナショナル・エクスペディションズ社のリチャード・ライル社長によれば、「最近もっとも話題となっている言葉に、環境収容力という用語がある。いかに人を管理するかが鍵である。」
エコツーリズムの管理が不充分な事例のいくつかを、東南アジアに見ることができる。例えばタイでは、カヤックによる海の鍾乳洞探検で高い評判を得た会社があった。しかしこの成功に他の会社もすぐに追随し、毎日1,000人もの観光客が鍾乳洞を訪れる事態となった。多くの観光客が土産にと鍾乳石を折って採り、野生生物を怖がらせて追い払ったりした。最初にこのツアーを行った事業主は、命をねらうとの脅迫を受け、アソシエイトの一人が撃たれ、負傷した。
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ブラジルのマミラウラ自然保護区で、物音を立てぬように科学者の話を聞く観光客
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適切な土地利用の計画こそ、開発と環境保全のバランスを図る上での鍵である。しかし、ラ米での土地利用計画は、例えばデータの不足、政治的意思の欠如、実施の不徹底など、数多くの理由で、規則や規定だけでなく、訓練も火急の課題となっている分野であると、エプラー・ウッズ会長は指摘する。その他、環境保全分野の模範となるコスタリカでさえ、開発により、公園や自然保護区周辺の緩衝地帯が侵食され続けている。多くのラ米諸国では、土地利用と所有権に関する法律が、実効ある政策の実施を困難なものとしている。その結果、自治体が自然保護区と隣接する地域の開発を制約しようにも、多くの場合、克服しがたい法的難題に直面する。
土地利用の問題は、緩衝地帯に留まらない。コスタリカの特別保護区のひとつであるモンテヴェルデ雲霧林は、雲がなくなりつつあり、それに伴い、着生植物や珍しい植物が豊富な高山屈曲林のみずみずしく茂った生態系を維持する重要な水源も失われつつある。その原因は、低地における森林伐採によって雲の形成に必要な水蒸気が減ってしまったことにある。失われたのは、動植物だけではない。毎年この地を訪れていた5万人の観光客と、この観光客相手の商売に依存していた企業も衰退した。
エコツーリズムは、経済的側面の他に、エプラー・ウッズ会長が言うところの「倫理の移転」を通じて未開地の保護にも役立つことができる。長年にわたり保全の倫理が発展してきた多くの先進諸国とは異なり、ラ米の環境保全支持者は今なお弱体である。しかしこれも、ベリーズ、コスタリカ、エクアドルなどの国では変わってきており、絶え間なく流入してくるエコツーリストと科学者の知識と情熱が地元の人々にも伝わってきている。
未開地は、可能な限りの援助を必要としている。「エコツーリズムは、旅行者、地元住民、そして産業のいずれにも利益をもたらす事業と言える。」とは、ワシントンに本拠を置く政策研究機関のエコツーリズムの専門家マーサ・ハニーの言である。「しかし現実はもっと複雑だ。」「公園や自然保護区をめぐって世界中で大きな紛争が起きている。」
エコツーリズムの実証された利点は、これらの紛争に決着をつけることはできないが、その結果に影響を与えることはできる。自然の生態系と生物多様性の保護には数多くの理由があるが、エコツーリズムがそのひとつであることは明らかである。
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