道路を安全に渡りきる
IDBの運輸部門の専門家が、交通事故の死亡率を早急かつ安価に削減するための政府施策を語る

 

アゴスティノ・デラ・ポルタ

 チャールズ・ライトはラ米で25年間の専門的な経験を積んだIDBのシニア・エコノミストであり、運輸部門の専門家である。1980年代にはブラジルにおいて交通安全グループのコーディネーターを務め、また「Fast Wheels, Slow Traffic: Urban Transport Choices」(フィラデルフィア、テンプル大学出版会、1992年)を著した。IDBでは数多くの運輸プロジェクトのチーム・リーダーを務め、IDBが最近刊行した一連の都市交通と交通安全に関する書籍や専門的な小論の執筆あるいは編集にあたっている。これには2001年に刊行された「Facilitando el trasporte para todos」(交通手段の普及)や「Financiamento do Sector de Transporte no Brasil」(ブラジルでの運輸分野における金融資金)が含まれる。また、この主題に関するIDBの新刊書としては、「Transito e Transporte Publico Urbano no Brasil」(ブラジルにおける交通と公共運輸)(2000年)、「Sistemas Modernos e Transicionais de Onibus no Mercosul Ampliado」(拡大メルコスールにおけるバスの近代システムと変貌)(2001年)、および「Reduzindo Acidentes: O Papel da Fiscalizacao de Transito e do Treinamento de Motoristas」(事故を減らす−交通統制とドライバーの教育)(2001年)がある。これらの刊行物の購入に関する情報は、http://www.iadb.org/exr/pub/index.aspを参照のこと。

エクアドルの首都キトを走る連結式の電気バスは交通渋滞と公害の緩和に役立っている

 ラ米における車道および歩道での事故の防止策について、ジャーナリストのアゴスティノ・デラ・ポルタが本誌IDBAmericaのためにライト氏にインタビューした。

 IDBAmerica:ラ米の交通事故の問題は世界の他の地域に比べて、どれほど深刻でしょうか。

 ライト:とても深刻です。ある推定によれば、域内の交通事故関係の死亡件数は年間およそ10万件に達すると見られています。人口を調整すると、これは大半の先進諸国の交通事故死亡件数の水準の6倍に相当します。毎年120万人がこれらの事故で傷を負っており、その多数が生涯にわたりその影響や障害に苦しんでいます。

 IDBAmerica:このような状況を改善するにはどのような策があるでしょうか。

 ライト:基本的な戦略は歩行者の安全を改善し、コスト面では地下鉄の5%から10%でありながら、地下鉄のように運行できる近代的なバス・サービスを提供することです。都市部では交通事故の死者のうちおよそ半分が歩行者で、私たちの地域は大いに都市化が進んでいます。近代的なバス・システムでは、事故による乗客の死亡者も重傷者も少ないし、またバス・システムは一般に利用者と歩行者用に安全な乗降および横断区域を設けています。他に重要な施策としては人間環境システム、交通法とその実施、ドライバーのトレーニングなどの改善があります。

 IDBAmerica:路面電車や軽鉄道、あるいは地下鉄などはどうでしょうか。

ライト:それらは、それを整備する余裕のある都市にとっては適切な選択肢でしょうが、ラ米では大規模な旅客鉄道網を建設できた都市はほとんどありませんし、路線がたったひとつできてもあまり役立ちません。バスは簡単に利用できますし、民間企業による運営・運行が可能であり、一部では国産もされています。現在では軽鉄道と同じ、また路面電車を凌ぐ輸送能力でバスを運行する技術が確立されています。

 クリチバ、ボゴタ、サンティアゴなどの都市では、すでにバス・サービスで成功を収め、経験を得ています。なすべきことは域内のさらに多くの都市に対してバス専用の車線を設け、得た経験を模範にするよう奨励することです。

 IDBAmerica:運転マナーの問題はどれほど深刻でしょうか。交通規則をもっと厳格に適用すべきでしょうか。

 ライト:情報や訓練、ならびに規則の施行を通じて運転マナーの改善を図ることが極めて重要です。速度制限や赤信号の電子的方法による違反摘発は、死亡事故の高い発生率を引き下げるのに大いに役立っています。トラックのタコグラフや電子機器はドライバーの強引なあるいは性急な行動を示す急な加速やブレーキあるいは急カーブなどを記録することができ、これを見て監視員はよりよい運転マナーや安全な行動をドライバーに指導することができます。

 IDBAmerica:地域の限られた資源を考慮した場合、現実的な現状改善策にはどのようなものがあるでしょうか。

 ライト:人と車両の関係により安全な環境を提供すること、公共交通機関の改善に努めること、歩行者の移動のための条件を改善することなどを中心とするものが相乗効果のあるアプローチとなるでしょう。(歩道を広くする、歩行者の横断地点に明確なマークを入れる等の)適切な環境はどのような警察による努力よりも交通取り締まりの効果が高く、かつ1日24時間整備されているものです。効率的で安全な公共交通機関があればより多くの人が自家用車を使わなくなるでしょう。教育と法規則の執行は人々の行動の改善に役立ちます。

 IDBAmerica:地域における免許取得にあたっての要件については、何か問題がありますか。

 ライト:もちろんです。訓練や免許交付の基準は十分に高いとは言えません。またラ米における交通事故のおよそ半分は酒気帯び運転が原因です。しかし、酒気帯び運転を取り締まる法律の実施はきわめて手ぬるいものとなっています。

 IDBAmerica:実際的な解決策ということになると、地域の当面の目標は何でしょうか。

 ライト:まず第一は歩道を整備することです。都市部の道路や車道には歩道が設けられておらず、設けられていても穴だらけであったり、あるいは駐車中の車や自動販売機、新聞・雑誌の販売所などが一部歩道を塞いでいたりします。適切な幅の歩道がきちんと整備されて、保護されていれば歩行者も車道を歩かなければならないようなことにはなりません。曲がり角は歩道の幅を広げ、横断距離を短くして、そのような危険な地点では歩行者と車が双方をよりよく確認できるようにしたらよいでしょう。

 経費のかからない二つ目の方策としては、身体的な障害がある人達もバスを利用しやすいようにバス停を改善し、バスの設計を変えるということがあります。交差点の道路標識を改善したり、また自転車専用車線を設けることも明らかに有効でしょう。

 IDBAmerica:この種の改善を行って成果を上げている国の実例をいくつかお教え願えますか。

 ライト:オランダが最良の例でしょう。オランダ人はどこに行くにも大半は歩くか自転車を利用しており、安全性については世界一の記録を誇っています。自動車はグッド・マナーを条件に「ゲスト」として道路にその存在を認められるという、人間環境システムが整備されています。ラ米地域では最初にクリチバが、今ではボゴタが人間環境システムの再設計で先導的立場にあります。ブラジリアでは法律の執行と教育の両方を通じて、交差点における歩行者優先の指導をドライバーに対し行っています。

 IDBAmerica:この分野でのIDBの活動はどのようになっていますか。

 ライト:IDBは2つのレベルで貢献しています。ひとつは研究、会議、ならびに上記で紹介したような書籍の刊行を後援しています。これについては域内の交通安全問題の独自の側面についての理解を高め、政策立案者や政府高官が特定の状況に適合させて適用できる実際の成功例を普及することが目的です。

 IDBではまた、貸付業務を通じてもこれらの慣行を推進しています。道路の建設や都市運輸プロジェクトに関連するIDBの貸付契約については適切な安全設計を要件としています。さらにIDBでは交通システムや歩行者の流れをよりよく理解するための調査研究の実施を都市に積極的に呼びかけています。その目的はより安全な環境を提供する都市計画や輸送システムのデザインを促進することにあります。

 


 

 

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